日本政府が、グリーンランドでレアアースや重要鉱物の採掘可能性を探る調査を、2026年夏にも始める見通しです。
日本経済新聞によると、現地調査には経済産業省やJOGMEC、商社などが関わる予定です。
調査では、埋蔵状況や採掘コストを確認します。
そのため、国内企業の投資判断につなげる狙いがあります。
この動きは、中国への供給依存を下げたい日本の資源戦略の一環です。
レアアースは、電気自動車や風力発電、精密機器、防衛装備に広く使います。
つまり、調達先の多角化は産業政策だけの話ではありません。
安全保障の面でも重要性が高まっています。
レアアース調達先の分散が急務になる背景
レアアースは、少量でも高性能な機器に欠かせない材料です。
モーターや磁石、電子部品などに使うため、現代産業の土台を支えます。
こうした中、日本は中国への依存を下げる必要に迫られています。
一方で、供給網の再構築は短期間で完了するものではありません。
そのため、日本政府は新たな供給源の候補地を探っています。
グリーンランド調査は、その具体策の一つです。
グリーンランドが有力視される理由
グリーンランドは、レアアース開発の有力候補として国際的に注目されています。
特に南部のTanbreezプロジェクトは、重希土類を含む重要案件です。
重希土類とは、レアアースの中でも供給が限られやすい種類です。
高性能磁石や先端技術分野で重要性が高いことで知られます。
実際に、Tanbreezの開発が進めば、供給網の分散に寄与する可能性があります。
また、日本にとっても新たな調達先候補になり得ます。
資源があっても、すぐ供給には結びつかない現実
しかし、採掘可能性の高さと商業化の実現は別問題です。
資源量が見込めても、すぐに安定供給が始まるわけではありません。
現地では、厳しい自然条件への対応が必要です。
さらに、インフラ整備や許認可対応も避けて通れません。
そのため、埋蔵状況の確認だけでは供給拡大に直結しません。
調査から開発、そして商業生産までは長い工程があります。
日本側調査は投資判断を見据えた動き
日本経済新聞の報道では、日本側の調査は単なる地質確認にとどまりません。
将来的な投資判断に結びつける色合いが強いとみられます。
つまり、日本政府や関係機関は、資源の有無だけを見ているのではありません。
採算性や事業化の現実性まで見極めようとしているわけです。
調査の結果次第では、商社や資源関連企業が関与する余地も出てきます。
また、日本企業の中長期的な供給戦略にも影響を与える可能性があります。
日本の重要鉱物戦略の中での位置づけ
日本は近年、レアアースを含む重要鉱物の供給網を複線化する姿勢を強めています。
複線化とは、調達先を一つに絞らず複数持つ考え方です。
一方で、供給不安は地政学リスクで急に表面化します。
そのため、平時から代替調達先を育てる必要があります。
グリーンランド調査は、国内精製や他国との連携と並ぶ施策です。
供給不安への備えとして位置づけられています。
米国防総省ルールが与える2027年の圧力
もう一つの焦点は、米国防総省の調達ルールです。
防衛契約では2027年1月1日から、中国、ロシア、イラン、北朝鮮由来の一部レアアース磁石や金属の使用が制限される予定です。
この動きは、防衛産業に大きな影響を与えます。
実際に、代替調達先の確保を急ぐ流れが強まっています。
また、この期限は単なる制度変更ではありません。
兵器や防衛関連システムの部材調達そのものに直結します。
防衛サプライチェーン全体への影響
報道によれば、対象国由来の工程をサプライチェーン全体で排除できなければなりません。
そうでなければ、契約対応が難しくなる可能性があります。
つまり、完成品だけを見れば済む話ではありません。
原料、加工、製造の各工程までさかのぼる必要があります。
こうした中、レアアースの供給網は産業用と防衛用の両面で再編が進みます。
グリーンランドのような新規供給源の価値が高まる理由もここにあります。
Tanbreezで進む企業案件の具体化
グリーンランド案件では、Critical MetalsがTanbreezプロジェクトを軸に動いています。
Reutersによると、同社はREalloysと15年の拘束力あるオフテイク契約を結びました。
オフテイク契約とは、将来生産する資源の引き取りをあらかじめ約束する契約です。
資金調達や事業計画の土台になりやすい仕組みです。
今回の契約では、年間生産量の15%を供給することで合意しました。
そのため、事業化に向けた一歩として注目されています。
グリーンランド政府の承認が持つ意味
加えて、グリーンランド政府は4月に、Critical Metalsの持ち分引き上げを承認しました。
この承認で、Tanbreezをめぐる事業化の土台は徐々に固まりつつあります。
一方で、承認が出たから即生産開始とはなりません。
実際には、開発には追加の準備が必要です。
しかし、権益や事業体制の整理が進むことは重要です。
そのため、日本を含む外部投資家にとっても判断材料になります。
本格生産までに残る課題
ただし、本格生産までにはなお複数の課題があります。
代表例は、資金調達と精製能力の確保です。
採掘した鉱物は、そのままでは最終製品に使えません。
精製とは、必要な成分を取り出して利用可能な形にする工程です。
さらに、採掘地と精製地が分かれる場合、物流面の課題も出ます。
一方で、採算が合わなければ投資は進みにくくなります。
日本の調査団が何を確認するのか
今後の注目点は、日本の調査団が現地で何を確認するかです。
単に鉱床の存在を確かめるだけでは不十分です。
実際に重要になるのは、埋蔵状況、採掘コスト、インフラ条件です。
また、事業化の難易度や投資採算も見極める必要があります。
そのため、今回の調査は日本の資源外交にも関わります。
どの程度具体的な投資案件につながるかが最大の焦点です。
2027年期限は予定通り実施されるのか
あわせて、米国の2027年期限が予定通り実施されるのかも重要です。
延期圧力がどこまで強まるのかは、市場の関心事になっています。
一方で、期限が維持されれば代替供給源の確保はさらに急務になります。
しかし、延期されれば企業側の対応スケジュールは変わる可能性があります。
つまり、制度の行方そのものが投資判断に影響します。
そのため、グリーンランド案件の評価も米国ルールと切り離せません。
戦略資源としてのレアアースの重み
レアアースは、もはや単なる鉱物ではありません。
供給網の安定性そのものが、各国の産業競争力と防衛力を左右する戦略資源です。
電気自動車、風力発電、精密機器、防衛装備のいずれにも関わります。
さらに、供給の偏在が大きいため、地政学の影響を受けやすい特徴があります。
こうした中、日本がグリーンランドに目を向けるのは自然な流れです。
一方で、調査結果がどこまで具体的な投資と供給につながるかは、これからが本番です。
日本の資源戦略は次の段階へ
今回のグリーンランド調査は、日本の資源戦略が次の段階に入ったことを示します。
調達先を広げるだけでなく、将来の投資先まで見据えた動きだからです。
また、米国防ルールや企業案件の進展も重なっています。
そのため、レアアースをめぐる競争は今後さらに激しくなる可能性があります。
実際に、日本がどのような判断を下すのかが注目されます。
グリーンランド調査は、対中依存低減を探る試金石になりそうです。
ソース
日本経済新聞
ロイター
The Straits Times
Adamas Intelligence
Mining.com
Critical Metals Corp.
Greenland government approval report

