政府が中古住宅ローン減税を拡充へ 借入上限4500万円と「残価設定型ローン」で変わる住宅購入の姿

政府と与党が、中古住宅の購入を後押しするための大きな方針転換に踏み出しました。 これまで新築優遇と言われてきた住宅ローン減税の仕組みを見直し、中古住宅でも手厚い減税が受けられるようにする内容です。

背景には、住宅価格の高騰と、金利のじわじわとした上昇があります。新築は高くて手が届かない人が増えるなか、比較的価格が抑えられた中古住宅を「現実的な選択肢」として後押ししようという狙いです。

さらに国土交通省は、車やスマートフォンでおなじみの「残価設定」の考え方を住宅ローンに持ち込む新しい仕組みも打ち出しました。 今後の住宅購入の常識が変わる可能性もある動きです。


中古住宅ローン減税の拡充ポイント

借入残高の上限が3000万円から4500万円へ

今回の見直しで最も分かりやすい変更点は、中古住宅に対する住宅ローン減税の上限が引き上げられることです。

現行の制度では、中古住宅の住宅ローン減税の対象となる借入残高は最大3000万円までです。 政府与党の新しい改定案では、この上限を4500万円まで引き上げる方針が示されました。

例えば、年末時点での住宅ローン残高が4000万円ある場合、これまでは3000万円分までしか減税の対象になりませんでした。 今後は4500万円が上限になるため、4000万円の全額が減税対象になります。

首都圏や都市部では、中古住宅であっても4000万円前後の価格帯は珍しくありません。 上限の引き上げによって、こうした価格帯の物件を購入する人にとっては、減税の恩恵が一段と大きくなることになります。

減税期間も10年から13年へ延長

もう一つ大きな変更点は、減税を受けられる期間です。

現在の中古住宅向け住宅ローン減税は、年末のローン残高の一定割合を10年間にわたって所得税などから差し引く仕組みです。 改定案では、この期間を新築と同じ13年に延ばすことが検討されています。

つまり、中古住宅を購入した人も、新築住宅と同じく長期間にわたって税負担の軽減を受けられるようになるということです。 中古住宅が新築に比べて不利だった「期間の短さ」という点が、かなり改善されます。

制度延長は2030年末まで 5年間の継続

住宅ローン減税そのものは期限付きの制度です。 今回の見直しでは、この制度全体を5年間延長し、2030年末まで続ける方向で調整が進められています。

今の制度は本来、2025年末で適用期限を迎える予定でした。 中古住宅の支援拡充とあわせて期間を延長することで、今後数年間に住宅購入を検討する人に対して、一定の予見可能性を示す狙いがあります。

これらの内容は、2026年度の税制改正大綱に盛り込む方向で最終調整が行われている段階です。


新たに導入される「残価設定型住宅ローン」とは

車やスマートフォンでおなじみの仕組みを住宅に応用

中古住宅ローン減税の拡充と並行して、国土交通省は「残価設定型」と呼ばれる新しいタイプの住宅ローンの普及を後押しする方針も示しました。

残価設定とは、将来その資産を売却するときの見込み価格をあらかじめ設定しておき、その分はローンの返済対象から外す仕組みです。

自動車の購入では、 数年後の下取り価格をあらかじめ「残価」として設定し、その残価を差し引いた金額だけを分割で支払うタイプのローンが広く普及しています。 スマートフォンの買い替えでも、一定期間後に端末を返却することを前提に、実質的な負担額を抑える販売方式が一般的になっています。

今回の方針は、こうした考え方を住宅に応用しようというものです。

残価設定型住宅ローンの基本的なイメージ

残価設定型住宅ローンのイメージを分かりやすく整理すると、次のようになります。

例えば、認定長期優良住宅と呼ばれる、質の高い長寿命住宅を4000万円で購入するとします。 ここで、将来その住宅を売却するときの想定価格を1000万円と設定した場合、その1000万円が「残価」です。

残価設定型ローンでは、この1000万円をあらかじめ将来の売却で回収する前提とし、残りの3000万円分だけを通常のローンとして返済していきます。 その結果、毎月の返済額を抑えることができます。

もちろん、この仕組みが成り立つためには、将来の価値がある程度見込める住宅であることが前提になります。 そのため対象は、一定の性能と耐久性が確認された認定長期優良住宅に限定される方向です。

住宅金融支援機構とJTIが支える仕組み

残価設定型住宅ローンの普及を支えるため、住宅金融支援機構が金融機関向けの保険を提供します。 住宅金融支援機構は、かつての住宅金融公庫の流れをくむ公的機関で、フラット35などの住宅ローン商品で知られています。

さらに、移住・住みかえ支援機構 JTI が住宅の将来価値を保証する役割を担います。 JTIは、高齢者向けの住みかえや、住まいの活用を支援するための公的な仕組みを運営してきた団体です。

このように、公的なバックアップを組み合わせることで、「将来売れることを前提に今の返済負担を軽くする」というこれまでにない住宅ローンモデルを広げようとしています。


現行の住宅ローン減税と今回の見直しの位置づけ

年末ローン残高の0.7パーセントを税額控除

現在の住宅ローン減税は、年末時点の住宅ローン残高の0.7パーセントを上限として、所得税などから直接差し引く「税額控除」という方式を採っています。

税額控除は、課税所得を減らす控除とは異なり、「支払う税額そのもの」を減らす仕組みです。 そのため、同じ金額の控除でも、手取りベースでの効果は比較的大きくなります。

今回の見直しでは、この基本的な仕組みは維持したまま、中古住宅について新築並みの優遇に近づけていく方向です。

床面積要件も緩和の方向 40平方メートル台を検討

与党税制調査会では、住宅ローン減税の適用対象となる住宅の床面積要件についても、見直しが検討されています。

現行制度では、原則として床面積50平方メートル以上の住宅が対象です。 新しい案では、40平方メートル台の物件まで対象を広げる方向で議論が進められています。

単身世帯の増加や、都市部でのコンパクトなマンションや小規模住宅の需要拡大を踏まえ、小さめの住宅にも減税の恩恵を広げたいという狙いがあります。

金利上昇局面での税制支援という意味合い

日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除しました。 これを受けて、民間銀行の住宅ローン金利もじわじわと上昇傾向にあります。

これまで長く続いてきた超低金利環境から、少しずつ普通の金利水準に戻りつつあるなかで、これまでのように「金利の低さだけで負担を抑える」ことが難しくなってきました。

政府としては、金利上昇で重くなりがちな返済負担を、税制面の支援である程度中和しながら、住宅購入の意欲が一気に冷え込むことを避けたいという意図があります。


誰にとってメリットが大きいのか

価格高騰で新築を諦めかけている層

今回の中古住宅ローン減税の拡充は、特に次のような人にとってメリットが大きいと考えられます。

一つは、住宅価格の高騰で新築を諦めかけていた層です。 新築マンションや戸建ての価格が上がり続けるなかで、「場所は妥協したくないので中古でも良いから立地重視で選びたい」というニーズは確実に増えています。

借入上限4500万円、減税期間13年という枠組みは、都心や人気エリアの中古物件を検討する人にとって、減税メリットを実感しやすいものになるはずです。

単身世帯やコンパクトな暮らしを志向する人

床面積要件の緩和は、単身世帯や共働きで平日は都心のコンパクトな住まいを選ぶ人などにとって、朗報となる可能性があります。

これまで面積要件で住宅ローン減税の対象外だった小さめの部屋が、対象に入ってくることで、「無理に広い物件を選ばなくても良い」という選択肢が増えることになります。

長期的な住み替えや資産活用を意識する世帯

残価設定型住宅ローンは、単に返済負担を抑えるだけでなく、「将来、住み替えや売却も視野に入れた住宅購入」を考えている人にとって、一つの選択肢になりえます。

例えば、定年前後の世代が「最後まで同じ家に住み続けるとは限らない」と考える場合や、将来は地方や別のエリアへの移住を視野に入れている場合など、ライフプランに合わせた住まいの設計がしやすくなる可能性があります。


注意しておきたいポイント

制度内容は今後の大綱で最終決定

今回紹介した内容は、政府与党内で示された改定案や方針であり、最終的な制度の細部は2026年度税制改正大綱などで確定します。

実際の運用では、所得の条件、住宅の性能要件、築年数の考え方など、細かな要件が設定される可能性があります。 中古住宅の購入を具体的に検討する際には、国土交通省や国税庁の公式資料、金融機関の説明などを確認することが重要です。

残価設定型ローンはメリットとリスクの両面を理解して検討を

残価設定型住宅ローンは、毎月の返済負担を抑えられる反面、将来の売却価格や市場環境に依存する面があります。

想定していた価格で売却できなかった場合や、想定よりも家の傷みが進んでいる場合などには、残価部分の扱いが焦点になる可能性があります。 こうしたリスクを十分に理解したうえで、自分のライフプランに合うかどうかを慎重に検討する必要があります。


まとめ 住宅購入環境の転換点に

中古住宅ローン減税の拡充、制度の2030年末までの延長、残価設定型住宅ローンの普及策、床面積要件の緩和検討など、一連の動きは、日本の住宅政策が「新築中心」から「中古や多様な住まい方へ」と軸足を移しつつあることを示しています。

金利上昇局面に入りつつある今、税制や金融商品を通じて、いかに無理のない形でマイホーム取得や住み替えを後押しするか。 今回の改定案は、その一つの答えの形と言えるでしょう。

一方で、制度の恩恵を最大限に活かすためには、最新の制度内容を正確に把握し、自分の収入、家計状況、将来のライフプランと照らし合わせて判断することが欠かせません。

住宅購入を検討している人にとって、今後数年間は、金利、税制、物件価格の動きを総合的に見ながら、一歩先を見据えた判断が求められる時期になりそうです。


ソース

日本経済新聞「住宅ローン減税、中古の限度額は最大4500万円に上げ 制度5年延長」 東京新聞デジタル「年末期限の住宅ローン減税延長へ 与党税調、対象広げ中古支援拡充」 大和ハウス工業関連資料 各種解説 国土交通省による住宅ローン減税および残価設定型ローンに関する説明資料 日本銀行 金融政策決定会合関連公表資料 住宅金融支援機構および移住・住みかえ支援機構の公表情報 各種全国紙および地方紙の経済面報道

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