2026年4月3日、国際経済と金融市場を巡る緊張が一段と高まりました。
2026年3月初頭に、米国・イスラエル連合軍によるイランへの攻撃が始まって以来、世界の金融市場は大きく揺れています。
その結果、ホルムズ海峡の封鎖懸念が原油価格を押し上げました。
また、その影響は日本の金融市場にも及び、過去20年以上で最大規模の外国資金流出が発生しました。
つまり、今回の動きは一時的な値動きではありません。
日本経済の弱点とされるエネルギー依存構造が、市場で改めて意識された局面だといえます。
日本株から過去最大の売り越し
財務省が公表した投資部門別売買状況によりますと、3月28日までの週に、外国人投資家は日本株を4兆4,500億円売り越しました。
これは、2005年に比較可能なデータが整って以来、最大の週次売り越しです。
さらに、日本国債も強い売り圧力を受けました。
同じ期間に、外国人による日本国債の売り越し額は6兆8,100億円に達しました。
こうした中、株式だけでなく債券からも資金が流出しています。
そのため、日本市場全体に対する警戒感が一気に強まった形です。
現金株でも高水準の売り越しが続く
さらに遡ると、3月27日までの週に、海外投資家は日本の現金株式のみで約1兆5,100億円を売り越しました。
これは2024年9月以来の高水準です。
また、この現金株の売り越しは3週連続で続いています。
一方で、単発の売りではなく、段階的に資金が引き揚げられてきたことも確認できます。
実際に、月中の推移は次の通りです。
| 期間 | 外国人売り越し額(現物・先物合計) |
|---|---|
| 3月第2週(3/9〜3/13) | 3,131億円 |
| 3月第3週(3/16〜3/20) | 4,290億円 |
| 3月28日週・株式合計 | 4兆4,500億円(過去最大) |
| 3月28日週・国債合計 | 6兆8,100億円 |
資金逃避は日本だけではない
この資金流出は、日本市場だけに限られていません。
ロイターによりますと、外国人投資家はアジア株式市場全体で純売越し総額505億ドルに達しており、月次ベースで最大流出額を更新する勢いとなっています。
つまり、今回の動きは日本固有の問題ではなく、アジア全体に広がる資金逃避です。
しかし、日本は中東リスクの影響を受けやすいため、より強く売られたと見ることができます。
インド市場にも広がる売り圧力
インドでも資金流出が進みました。
完全アクセス可能ルート、いわゆるFAR国債から、2月27日から4月1日の間に約1,769億ルピー(Rs 17,689 crore)が流出しました。
FAR国債とは、外国人が投資しやすいように設けた国債の枠組みです。
その資金が流出したことで、10年物国債利回りは7%を超える水準に上昇しました。
さらに、インド株式市場でも売りが広がっています。
外国人投資家による売り越し額は、2026年累計で1兆ルピー(約1兆円相当)を超えています。
日本経済を直撃する原油高の重み
日本経済が今回の混乱にとりわけ弱い理由は、エネルギーの調達構造にあります。
日本の輸入原油の約92%がホルムズ海峡を経由しています。
そのため、ホルムズ海峡の封鎖懸念は、単なる海外リスクではありません。
日本にとっては、直ちに供給不安につながる極めて重い問題です。
一方で、金融市場はこうした構造的な弱点を敏感に織り込みます。
つまり、今回の外資流出は、地政学リスクとエネルギー依存が結びついた結果です。
GDPと物価への試算も示された
ノムラ総合研究所は、今回の紛争が日本経済に与える影響を試算しています。
それによりますと、日本の実質GDPは0.18%ポイント押し下げられる見通しです。
また、インフレ率は0.31ポイント押し上げられると予測されています。
これは、景気を下押ししながら物価を押し上げる作用を意味します。
さらに、家計にも企業にも負担が及びます。
そのため、金融市場では景気減速とインフレ加速が同時に意識されやすくなっています。
円安進行が家計を圧迫する可能性
円相場にも下落圧力がかかりました。
1ドル156円台を超え、心理的節目の160円に迫る局面も見られました。
円安は、輸入価格を押し上げます。
特に原油や天然ガスなどの輸入コストが膨らむため、国内の物価上昇圧力が強まりやすくなります。
実際に、エネルギー価格の上昇と円安が重なると、家計の実質的な購買力は低下します。
原油高・円安・インフレの三重苦が、日本経済の重荷として意識されています。
日銀の利上げ判断にも影響
日本銀行は、利上げ継続の方針をなお維持しています。
日銀副総裁の氷見野良三氏は、市場の急変動だけを理由に利上げを先送りする考えはないと明言しました。
しかし、市場では別の見方もあります。
一方で、景気停滞と物価上昇が同時に進むスタグフレーションへの懸念が高まっているためです。
スタグフレーションとは、景気が弱いのに物価が上がる厄介な状態です。
そのため、日銀が今後はより慎重な姿勢に傾くのではないかとの観測も残っています。
ドルは安全資産として買われた
外為市場でも混乱は続きました。
紛争勃発の直後は、リスク回避の動きから安全資産としてドルが買われました。
その結果、ドルは2025年11月以来の高値を記録しました。
スイスクォートのシニアアナリスト、イペク・オズカルデスカヤ氏は、「ドルが中東紛争の最大の勝者だ」と指摘しています。
つまり、投資家はまず危機時の逃避先としてドルを選んだことになります。
また、この動きは円の弱さを一段と際立たせました。
停戦期待と追加攻撃表明で乱高下
しかし、ドル高が一方向に続いたわけではありません。
3月下旬には停戦期待が浮上し、ドルが一時反落しました。
ところが、その流れは長く続きませんでした。
トランプ大統領がイランへの追加攻撃を表明したことで、市場は再び緊張を強めました。
そのため、ドル相場は再度大きく揺れました。
こうした中、投資家心理は改善と悪化を短期間で繰り返す不安定な状態にあります。
国内投資家は海外株を買い続けた
外国人投資家が日本市場から資金を引き揚げる一方で、国内投資家の動きは対照的でした。
国内投資家は6週連続で海外株式を純購入しています。
この背景には、地政学リスクへの警戒に加えて、円安局面で海外資産を選好する動きがあるとみられます。
つまり、日本から逃げる外資と、海外へ向かう国内資金が同時に進んでいます。
また、投資家ごとの見方の違いも鮮明です。
個人や一部投資家が外に向かう一方で、国内機関投資家は慎重さを強めています。
信託銀行は慎重姿勢を継続
信託銀行は11週連続の売り越しを記録しました。
信託銀行は年金や機関投資家の運用を担うことが多く、市場の慎重な見方を映しやすい存在です。
そのため、この連続売り越しは偶然ではありません。
国内の機関投資家も、相場の先行きに強い警戒感を持っていることがうかがえます。
一方で、同じ国内資金でも行動は一様ではありません。
こうした中、誰が何を買い、何を売っているかを見極めることが重要になります。
今後の最大の焦点はホルムズ海峡
今後を考えるうえで、最大の焦点はやはりホルムズ海峡の情勢です。
日本のエネルギー供給に直結するため、その動向は金融市場にも即座に反映されます。
現時点では、停戦の具体的な見通しはなく、ホルムズ海峡の再開時期も不透明です。
そのため、市場では「最悪の事態が長引くのではないか」という警戒が残っています。
さらに情勢が悪化すれば、日本市場からの外資流出が一段と膨らむ可能性があります。
これは株価だけでなく、債券、為替、物価にも波及するおそれがあります。
湾岸金融システムへの波及リスク
S&Pグローバル・レーティングスは、紛争が長期化した場合の金融リスクにも警鐘を鳴らしています。
それによりますと、湾岸諸国の銀行から最大3,070億ドルの預金が流出するリスクがあります。
これは中東地域の金融システムそのものへの不安を示す数字です。
また、その影響が世界の信用市場や資本移動に広がる可能性もあります。
つまり、日本市場の資金流出は、より大きな国際金融不安の一部として見る必要があります。
一国だけの現象として片づけるのは難しい局面です。
日本が直面した構造的な弱点
今回の資金流出は、単に戦争が起きたから売られたという話ではありません。
日本のエネルギー輸入依存という構造的な脆弱性が、改めて市場で強く意識されました。
実際に、原油調達の多くを特定海域に依存している状況は、危機時に大きな弱点になります。
そのため、市場は日本を相対的にリスクが高い市場として見た可能性があります。
さらに、円安と輸入物価上昇が重なることで、国内景気への不安も強まります。
こうした中、政策と市場の両面で対応を急ぐ必要があります。
中長期で問われる対応策
今後は、再生可能エネルギーへの転換加速が重要な論点になります。
また、資源調達先の多様化も避けて通れません。
一方で、こうした対策はすぐに効果が出るものではありません。
つまり、短期的な市場安定策と、中長期の構造改革を同時に進める必要があります。
投資家、企業、政策立案者のいずれにとっても、中東情勢の動向は引き続き最重要の監視対象です。
日本市場の先行きを左右するのは、ホルムズ海峡と停戦交渉の行方だといえます。
ソース
財務省
ロイター
ノムラ総合研究所
日本銀行
S&Pグローバル・レーティングス
スイスクォート

