能登半島地震や大規模障害の教訓を受け、緊急通報の確保を強化**
携帯電話会社の通信障害や大規模災害が発生した際、契約しているキャリア(通信会社)以外の回線を一時的に利用して通話できるようになる新しい仕組みが、早ければ来年2025年3月にスタートします。
特に重要なのは、
110番(警察)・119番(消防・救急)・118番(海上保安) といった緊急通報が途切れないようにすることです。
携帯依存が加速した現代社会において、緊急通報の不通は命に関わる深刻な問題です。今回の制度は、その弱点を大きく改善する取り組みとなります。
■ なぜ制度が必要なのか ― 能登半島地震での深刻な通信途絶
総務省は2022年から「非常時における事業者間ローミング」に関する検討会を進めてきましたが、導入時期は2025年度末とされていました。
しかし状況を変えたのが 2024年の能登半島地震 です。
この地震では広い範囲で通信網が完全に途絶し、
・救助要請ができない
・安否確認ができない
・自治体同士の連絡が取れない
といった重大な問題が全国的に報じられました。
その反省から、新制度の導入は大きく前倒しされることになりました。
■ 新制度の名称は「JAPANローミング」
今回の新制度は 「JAPANローミング」 と名付けられました。
ローミング(roaming)とは、本来海外で使う言葉で、
「契約している通信会社とは別のネットワークを借りて通信する仕組み」
を指します。
これを国内でも、非常時に限って一時的に使えるようにしたものです。
仕組みは大きく2種類に分かれます。
① フルローミング方式(基地局が壊れた時)
スマホがつながるための“基地局”そのものが停止した場合に使われます。
● 内容
- 他社の基地局を使って電話・データ通信が可能
- 緊急通報もできる
- さらに消防や警察からの「折り返し電話(呼び返し)」も受けられる
最も万能な方式で、実質的には「別キャリアに仮入会するような状態」になります。
② 緊急通報のみ方式(コアネットワークの障害時)
基地局は動いていても、
通信会社の“中枢システム(コアネットワーク)”がダウンした場合 に使われます。
● 内容
- 110番・119番・118番のみ発信できる
- ただし折り返し電話(呼び返し)は受けられない
最低限、命に関わる通報だけは行えるようにする仕組みです。
■ 過去の大規模障害が制度化を後押し
この制度化が強く求められた背景には、
2022年7月のKDDI(au)大規模通信障害 があります。
この障害は
● 約61時間25分
● 全国で約3091万人に影響
● 音声・データともに広範囲で利用不能
という、過去最悪級のトラブルでした。
特に問題だったのは、
緊急通報(110・119)が発信できないケースが発生したこと。
また、車の中の緊急通報システム(事故時に自動通報)も使えなくなるなど、社会インフラとしての弱点が明らかになりました。
さらに、110番通報の約65%が携帯電話から行われている実情もあり、
携帯電話の障害=緊急通報の停止
につながってしまう危険性が浮き彫りになっています。
■ 制度開始に向けた法整備も進行中
JAPANローミングを導入するにあたり、
端末設備等規則
事業用電気通信設備規則
などの関連規則の改正が進められています。
これらは2025年10月1日から適用される予定ですが、
制度としての運用は来年3月から先行して開始される見込みです。
今後はスマートフォンや通信機器が、
「障害時にどのネットワークへ自動接続するか」
という仕様の標準化も進んでいくと見られます。
■ まとめ ― 国民の命を守るための通信インフラへ
日本は地震をはじめとした自然災害が多い国です。
また、私たちは生活のあらゆる場面でスマートフォンに依存しており、通信障害が起きると社会が一気に麻痺します。
今回の「JAPANローミング」は、
『携帯が圏外でも緊急通報だけは必ずつながる社会』
を実現するための大きな一歩と言えるでしょう。
制度の実装が進めば、スマートフォンの安全性・信頼性は以前より大きく向上し、災害時の不安も軽減されるはずです。
ソース
・k-tai.watch
・monoist(ITmedia)

