長生炭鉱事故84年 海底遺骨収容進む中、潜水調査で台湾人ダイバー死亡

1942年に山口県宇部市の海底炭鉱「長生炭鉱」で発生した水没事故から84年を迎えた7日、炭鉱跡地近くで犠牲者を悼む追悼式が開かれました。この事故では、朝鮮半島出身者136人を含む183人が命を落としています
追悼式には日本と韓国の遺族らが参列し、長年海底に取り残されてきた犠牲者一人ひとりに祈りを捧げました。

その前日となる6日には、遺骨収容を目的とした潜水調査が行われ、新たに頭蓋骨など計5点の人骨が回収されました。一方で、7日には調査に参加していた台湾人ダイバーが死亡するという痛ましい事故が発生し、調査は中断を余儀なくされています。

84年の時を超えて発見された遺骨

6日に実施された潜水調査には、日本国内だけでなく、フィンランドなど海外から集まったボランティアダイバーが参加しました。調査は、海岸から約300メートル沖に残る「ピーヤ」と呼ばれる排気・排水用の円筒構造物から旧坑道へ進入する形で行われました。

調査を指揮した水中探検家の伊左治佳孝氏によると、主坑道に到達した地点で、靴や手袋を着用した状態のほぼ全身の骨が発見されたといいます。
回収されたのは、金歯が残る頭蓋骨、下顎、首の骨など計5点で、将来的なDNA型鑑定を見据え、慎重に収容されました。頭部の骨には石炭が付着し、長年の海底環境を物語るように黒く変色していました。

韓国から訪れた遺族会の楊玄会長は、収容された遺骨と対面し、
「遺骨を見て、言葉にできないほど多くの思いがこみ上げてきた。危険な中で潜ってくれたダイバーの方々に心から感謝したい」
と語っています。

なお、2025年8月に行われた前回調査でも、初めて頭蓋骨など4点の人骨が収容されており、今回の調査はそれに続く重要な成果となりました。

日韓の遺族が参列した追悼式、日本政府は今年も欠席

7日に行われた追悼式には、日本と韓国の遺族をはじめ、両国の国会議員らが参列しました。韓国からは行政安全省の幹部が出席し、長年にわたって遺骨収容に取り組んできた市民団体の活動を評価し、表彰を行いました。

一方で、日本政府は今年も追悼式に出席しませんでした
遺骨収容に取り組む市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」の井上洋子共同代表は、
「今年こそ、日韓両国の遺族に遺骨をお渡ししたい」
と語り、政府の関与の必要性を強く訴えました。

楊会長も、
「遺族が長年待ち望んできた遺骨との対面が実現した、初めての追悼集会となった」
と成果を評価しつつ、
「日本政府が主体的に遺骨収容に取り組まない限り、この問題は本当の意味では解決しない」
と厳しい口調で指摘しました。

潜水調査中に台湾人ダイバーが死亡、調査は中断へ

追悼式が行われた7日の正午過ぎ、潜水調査に参加していた台湾人ダイバーのウェイスー氏(57)が、調査中にけいれんを起こし、心肺停止の状態で搬送されました
同団体によると、低水温による影響が原因とみられており、懸命な救命措置が行われたものの、午後2時に死亡が確認されました。

この事故を受け、11日まで予定されていた潜水調査は、8日をもって中止となりました。
遺骨収容という人道的目的のために続けられてきた調査の現場で、新たな犠牲者が出たことは、関係者や遺族に大きな衝撃を与えています。

今後の課題と日韓協力の行方

長生炭鉱事故では、1942年2月3日の水没事故により、183人もの命が奪われました。
今年1月に行われた日韓首脳会談では、遺骨のDNA型鑑定を日韓で共同して進めることで合意しており、今回収容された遺骨も、その対象となる可能性があります。

しかし、現場での調査は民間団体の努力に大きく依存しているのが現状です。
安全確保、調査体制の整備、そして政府の主体的関与がなければ、遺骨収容はこれ以上進まないとの指摘もあります。

84年という長い年月を経て、ようやく動き始めた遺骨収容の取り組みが、新たな犠牲を生むことなく、真の解決へと向かうのか
今後の日韓両政府の対応が、厳しく問われています。

ソース

・毎日新聞
・東京新聞
・沖縄タイムス
・au Webポータル(記事配信元)

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