出光興産がエチレン減産開始|ホルムズ海峡封鎖で国内拠点の半数が稼働縮小

出光興産は2026年3月16日、千葉事業所(千葉県市原市)と徳山事業所(山口県周南市)でエチレンの減産を開始しました。

エチレンはプラスチックや合成繊維など多くの製品の基礎原料です。
そのため、この減産は石油化学企業だけでなく、日本の製造業全体に影響する可能性があります。

さらに背景には、ホルムズ海峡の事実上の封鎖による原料ナフサの調達難があります。
つまり、中東情勢が日本の化学産業に直接影響した形です。

こうした中、エチレン減産が今後どこまで広がるのかが注目されています。

ナフサ不足がエチレン減産を引き起こす

エチレンは、石油を精製して得られるナフサから生産されます。
ナフサを高温で分解することでエチレンなどの基礎化学品が作られます。

しかし、ホルムズ海峡の事実上の封鎖によってナフサの輸送が滞りました。
そのため、国内の石油化学企業は原料不足に直面しています。

出光興産の広報担当者は、顧客への影響を最小限に抑えるために稼働率を調整していると説明しました。
一方で、減産開始の具体的な時期や稼働率の詳細は明らかにしていません。

出光興産の2拠点は国内生産の約16%

今回減産を始めたのは、千葉事業所と徳山事業所です。
これらの設備は国内のエチレン生産能力の約16%を占めています。

つまり、この2拠点の稼働縮小は業界全体に大きな影響を与えます。
日本の石油化学産業にとって重要な生産拠点だからです。

さらに、日本国内には約12カ所のエチレン生産拠点があります。
しかし、今回の情勢によりそのうち6カ所で減産が実施されました。

つまり、国内拠点の半数が稼働縮小に入ったことになります。

石油化学業界全体に広がる減産

減産は出光興産だけではありません。
石油化学業界ではすでに複数の企業が稼働率を下げています。

まず、三菱ケミカルグループは3月6日から茨城事業所で減産を開始しました。
さらに、旭化成も3月11日から岡山県倉敷市の共同運営設備で減産に入りました。

また、三井化学も千葉県と大阪府の工場で稼働率を引き下げています。
さらに、住友化学と丸善石油化学による合弁会社「京葉エチレン」は再稼働を延期しました。

このように、石油化学産業全体で減産の動きが広がっています。

日本のナフサ調達は中東依存が7割超

今回の事態で、日本の石油化学産業の弱点も浮き彫りになりました。
それが原料ナフサの中東依存です。

石油化学工業協会の統計によると、日本のナフサ輸入は中東依存が73.6%に達しています。

つまり、ホルムズ海峡の混乱は直接的な供給リスクになります。

さらに業界関係者によると、国内のナフサ在庫は「約2週間から最大1カ月程度」とされています。

つまり、物流の混乱が長期化すると、減産はさらに広がる可能性があります。

エチレンは製造業の基礎原料

エチレンは石油化学産業の最も基本的な化学物質です。

エチレンから作られる主な製品は次の通りです。

・ポリエチレン(食品包装など)
・ポリプロピレン(自動車部品など)
・合成繊維
・化学樹脂

つまり、エチレンは多くの産業の出発点となる素材です。

そのため、減産が長期化すると、自動車、家電、食品包装など幅広い産業に影響する可能性があります。

政府はサプライチェーン対策を表明

こうした状況を受け、政府も対応を進めています。

赤沢亮正経済産業相は3月12日の衆院予算委員会で次のように述べました。

「関係企業と緊密に連携し、サプライチェーン確保のため必要な対策を実施する」

サプライチェーンとは、原料調達から生産、流通、販売までの供給網のことです。

つまり政府は、企業と連携して供給の安定を図る方針です。

しかし、原料そのものが不足すれば対応は簡単ではありません。
そのため企業は稼働率の調整などで影響を抑えています。

エネルギー安全保障の課題が再浮上

今回のエチレン減産は、単なる化学産業の問題ではありません。
日本のエネルギー安全保障の課題を示しています。

日本は原油だけでなく、石油化学原料でも中東への依存度が高い構造です。

そのため、中東情勢が不安定になると、製造業全体に影響が及びます。

今回のように国内生産拠点の半数が減産する事態は、その構造的な弱さを示した出来事とも言えます。

今後の焦点はホルムズ海峡の情勢

今後の最大の焦点は、ホルムズ海峡の混乱がいつ収束するかです。

もし航行が正常化すれば、ナフサの供給も回復する可能性があります。

しかし、混乱が長期化すれば、エチレン減産はさらに拡大する恐れがあります。

その結果、日本の製造業や消費者価格にまで影響が広がる可能性もあります。

つまり今回の出来事は、化学産業の問題であると同時に、日本経済全体の問題でもあるのです。

ソース

東洋経済
ロイター
石油化学工業協会統計
経済産業省発言資料

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