2026年4月6日、中東情勢の緊迫化が続く中で、日本関係船舶によるホルムズ海峡通過が3例目に達しました。 商船三井は6日、インド船籍のLPG船「GREEN ASHA(グリーンアシャ)」がホルムズ海峡を通過し、ペルシャ湾の外へ出たと明らかにしました。
この動きが重要な理由は明確です。通過が確認された3隻すべてが商船三井の関連船舶だったためです。 つまり、日本海運が直面する中東リスクの中で、同社の動きが全体像を映す存在になってきました。
今後の焦点もはっきりしています。3隻の通過は前進です。しかし、なお多くの日本関係船舶がペルシャ湾内に残っています。 そのため、今回の通過実績をどう次につなげるかが、日本のエネルギー安全保障を考えるうえで大きな論点になります。
「GREEN ASHA」はどのような船なのか
「GREEN ASHA」は、インドの関連会社が保有するインド船籍のLPGタンカーです。LPGとは液化石油ガスのことです。家庭用や産業用の燃料として広く使われるエネルギーで、日本やアジアの物流でも重要な役割を担います。
この船はLPGを積載し、インドへ向かっていました。しかし、船員の人数や国籍は公表していません。一方で、商船三井は日本人乗組員が乗っていないことを明らかにしています。
同社の広報担当者は、「船員と貨物、船舶の安全を確認した」と説明しました。また、安全確認を前面に出した対応は一貫しています。さらに、通過した日時や具体的なルート、イラン側への通過料金支払いの有無についてはコメントしていません。
3隻の通過を時系列で見る
商船三井関連で通過が確認された3隻を、時系列で整理すると次のとおりです。
| 通過確認日 | 船名 | 船籍 | 種別 | 行き先 |
|---|---|---|---|---|
| 4月3日 | SOHAR(ソハール)LNG | パナマ | LNG船 | 非公表 |
| 4月4日 | GREEN SANVI | インド | LPG船 | インド |
| 4月6日 | GREEN ASHA | インド | LPG船 | インド |
1隻目の「SOHAR LNG」は、商船三井がオマーン企業と共同保有するパナマ船籍のLNG船です。LNGは液化天然ガスを指します。天然ガスを冷却して液体にし、大量輸送しやすくしたものです。
この船は、イラン攻撃以降の日本関係船舶として初めて通過が確認された船になりました。つまり、その後の航行再開を占う象徴的な事例でした。また、初例だったことから、業界内でも大きな関心を集めました。
2隻目は「GREEN SANVI」です。インド船籍のLPGタンカーで、インドへ向かって航行していました。そして、今回の「GREEN ASHA」が3隻目となりました。こうした中、3隻すべてが商船三井の関連船舶だった点は、やはり重い意味を持ちます。
一方で、商船三井は通過の詳しい経緯を説明していません。交渉の有無や、どのような判断で通過に至ったのかも明らかにしていません。そのため、通過実現の背景は現時点では確認できません。
ホルムズ海峡が日本にとって特別に重い理由
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ海上ルートです。最も狭い部分の幅は約33キロメートルです。地理的には短い海峡ですが、世界のエネルギー輸送を支える要衝として知られています。
この海峡が重要な理由は、日本の輸入構造にあります。日本は原油の9割以上を中東から輸入しています。 さらに、その約8〜9割がホルムズ海峡を経由するとされます。つまり、この海峡の不安定化は、日本経済の根幹に直結します。
2026年3月以降、イランが事実上の封鎖を宣言しました。そのため、日本のエネルギー安全保障は深刻な危機に直面しました。エネルギー安全保障とは、必要な燃料や電力を安定して確保できる体制のことです。実際に、この海峡の緊張は海運だけでなく、原油、LNG、LPGの安定供給全体に影響します。
ペルシャ湾に残された日本関係船舶の現実
イランによる封鎖宣言の後、ペルシャ湾内に留め置かれた日本関係船舶は最大で45隻に上りました。 この数字は、日本の物流とエネルギー供給がどれほど大きな圧力を受けたかを示しています。
実際に、3月3日時点では42隻が入域していました。そのうち4隻には、日本人乗組員23人が乗船していました。しかし、その後も滞留する船の数は増え、最大45隻に達しました。つまり、危機は一時的ではなく、時間の経過とともに広がったことになります。
こうした中、日本船主協会は「海上安全等対策本部」を設置しました。これは、船員の安全確保や情報共有を強化するための体制です。また、海運各社が個別に判断するだけでなく、業界全体で危機管理を進める必要があることも浮き彫りになりました。
政府対応と各国対応の違い
日本政府は、今回の船舶通過についてイランとの交渉に直接関与していないとされています。さらに、今回の通過は外交的な合意に基づくものではないとみられています。そのため、日本政府が前面に立って航路を確保した事例とは位置づけられていません。
一方で、他国の対応は異なります。タイ、フィリピン、マレーシアは、イランとの個別交渉を通じて船舶通過の許可を得たと発表しています。 つまり、各国は同じ危機に直面しながらも、対応手段に差が出ています。
欧州でも動きがありました。フランスの海運大手CMA CGMのコンテナ船が4月2日にホルムズ海峡を通過したことが確認されています。 これは、欧州の海運大手としては初のケースとみられています。また、日本の事例と合わせて見ると、各国・各社が条件の異なる中で通過を探っている状況が見えてきます。
3隻通過が示したもの
今回の「GREEN ASHA」の通過は、単独のニュースではありません。4月3日の「SOHAR LNG」、4月4日の「GREEN SANVI」、4月6日の「GREEN ASHA」と、商船三井関連船舶が連続して通過した流れの一部です。
この連続通過は、海峡封鎖下でも一部の船舶が通過できる現実を示しました。しかし、それだけで全面正常化を意味するわけではありません。一方で、通過できた船があるからといって、残る全船の安全な航行が保証されたわけではありません。
また、商船三井が詳細を非公表としている点も重要です。通過条件や安全判断の基準が見えない以上、他社が同じ形を再現できるかどうかは不透明です。つまり、今回の3例は希望材料ではありますが、一般化できる段階にはありません。
日本海運とエネルギー安保の次の焦点
3隻が通過したことは前向きな材料です。しかし、依然としてペルシャ湾内には多くの日本関係船舶が残っています。 そのため、日本海運にとって本当の課題は、個別成功の確認ではなく、継続的で安全な航行の再構築です。
日本のエネルギー安全保障の観点でも、ホルムズ海峡の正常化は急務です。原油やLNGだけでなく、LPGの流れも生活と産業の両方を支えています。さらに、海上物流の停滞が長引けば、燃料価格や調達コスト、供給不安に波及する可能性があります。
こうした中、政府、海運業界、外交ルートの連携が一段と重要になります。実際に、個別企業の努力だけでは限界があります。そのため、今後は船員の安全確保とエネルギー安定供給の両立をどう進めるかが最大の焦点になります。
商船三井の姿勢と残る不確実性
商船三井は今後について、「船員・貨物・船舶の安全を最優先に対応していく」としています。この姿勢は、これまでの説明とも一致しています。また、安全確認を最優先に置く方針は、現在の中東情勢では当然の前提でもあります。
しかし、現場を取り巻く不確実性はなお大きいままです。通過の日時、ルート、通行条件、交渉の有無など、核心部分は依然として非公表です。つまり、3隻の通過が確認された一方で、その再現性や継続性はまだ見通せません。
今後は、残る日本関係船舶がどのように動くのかが最大の注目点です。また、ホルムズ海峡をめぐる緊張が緩和に向かうのか、それとも長期化するのかによって、日本海運と日本経済への影響は大きく変わります。
ソース
商船三井の発表内容
記事内で示された通過確認の事実関係
記事内で示された各国対応と船舶動向
記事内で示されたホルムズ海峡と日本のエネルギー輸入構造に関する数値

