日産が9割の車種にAI自動運転技術を搭載へ|車の知能化で再成長を狙う長期戦略

日産自動車は、将来的に販売する車種の約9割にAIを活用した自動運転技術を搭載する長期方針を打ち出しました。
これは単なる新機能の追加ではありません。
「車の知能化」を軸に、収益性の改善とブランド価値の立て直しを同時に狙う成長戦略です。

今回の方針が重要なのは、自動車業界の競争軸が大きく変わっているためです。
一方で、電動化だけでは差別化しにくくなっています。
そのため、日産はAI自動運転技術を前面に出し、再成長につなげようとしています。

今後は、車種の絞り込みとAI投資を並行して進めます。
つまり、数を追う戦略から、重点分野に厚く投資する戦略への転換です。
日産のAI自動運転は、同社の将来像を示す中核テーマになりそうです。

成長戦略の中心に置かれた「車の知能化」

日産は、横浜市で開いた説明会で、今後の成長戦略として「車の知能化」を中核に据える方針を示しました。
AIを使った自動運転や運転支援の技術を、将来的に車種の約9割へ広げる構想です。
また、運転負荷の軽減や安全性の向上だけでなく、ソフトウェアを活用した新たな価値提供も視野に入れています。

背景には、世界市場での競争激化があります。
さらに、電動化シフトも進んでいます。
こうした中、日産は電動車に加え、ソフトウェアとAIをてこに差別化を進めようとしています。

日産が狙うのは、「技術の日産」というイメージの再強化です。
しかし、従来型の機械中心の競争だけでは存在感を高めにくくなっています。
そのため、日産のAI自動運転をブランド再建の柱に据える流れが鮮明になっています。

次世代ProPILOTが担うAI自動運転の中核

AI自動運転技術の中核に位置づけられているのが、従来の「ProPILOT」を発展させた次世代の運転支援システムです。
運転支援とは、車が加速、減速、操舵を部分的に助ける技術です。
日産はこの領域をさらに高度化しようとしています。

この次世代システムでは、センサーと高精度な認識技術に加え、AIによる判断を組み合わせます。
つまり、車の周囲を見て認識するだけでなく、状況に応じてより柔軟に判断する仕組みを強める考えです。
実際に、これまで以上に多様な交通環境への対応が期待されています。

また、日産は英スタートアップWayveのエンドツーエンドAI「Wayve AI Driver」など、外部の先進技術との連携も視野に入れています。
エンドツーエンドAIとは、車載カメラなどの情報から運転判断までを一体で学習する方式です。
一方で、高速道路より複雑な市街地でも、ドライバーの負担を軽減する高度な運転支援の実現を目標にしています。

新型エルグランドが担う最初の本格展開

この日産 AI自動運転技術の本格展開の第一弾として位置づけられているのが、大型ミニバン「エルグランド」の次期モデルです。
エルグランドの新型は、高級ミニバン市場での巻き返しを担う戦略車種です。
トヨタの「アルファード」などが競う市場で、再び存在感を示せるかが焦点になります。

報道によれば、新技術は市街地でのハンズオフ走行にも対応することを目指しています。
ハンズオフ走行とは、一定条件の下でドライバーがハンドルから手を離せる運転支援です。
さらに、2027年度にエルグランドの新型車で導入する予定とされています。

発売時期や装備の詳細は、今後の発表を待つ必要があります。
しかし、市街地でも使える高度な運転支援は、日産を象徴する技術として訴求される可能性があります。
そのため、新型エルグランドは日産のAI自動運転を印象づける重要なモデルになります。

56車種から45車種へ絞る収益重視の再編

AI技術への投資と並行して、日産は世界で販売するモデル数を現在の56から45へ減らす方針も示しています。
利益の薄いモデルを整理し、収益性の高い分野や成長が見込める市場に資源を集中させる考えです。
これは商品戦略の大きな見直しです。

モデル数を絞ると、1車種あたりの販売台数を増やしやすくなります。
また、開発効率も高めやすくなります。
そのため、限られた車種にAI自動運転や電動化などの先進技術を重点投入しやすくなります。

つまり、従来の「広く薄く」から、「狙いを定めて厚く投資する」体制への転換です。
一方で、車種削減は販売網や地域戦略にも影響を与える可能性があります。
それでも日産は、選択と集中によって競争力を高めようとしています。

Uber・Wayveと進める東京ロボタクシー実証

日産のAI戦略は、自家用車向けの技術開発だけにとどまりません。
Uber、Wayveとの三社協業を通じて、東京でのロボタクシーサービスに向けた実証も進める計画です。
ロボタクシーとは、自動運転技術を活用した配車型の移動サービスです。

2026年後半をめどに、WayveのAI技術を搭載した日産車を使い、Uberの配車プラットフォーム上で試験運行を始めると発表されています。
実際に、この実証では一般の道路環境に近い条件でデータやノウハウを蓄積していくことが想定されます。
また、安全確保のため、実証段階ではドライバーが同乗する形が見込まれています。

こうした取り組みは、一般ユーザー向けの運転支援と切り離されたものではありません。
むしろ、モビリティサービスで得た知見を市販車にも生かす相乗効果が期待されます。
さらに、将来的にはデータやソフトウェアを連携させるエコシステム構想も視野に入れていると考えられます。

テスラ時代に問われる日産の存在感

テスラをはじめとする海外勢は、すでに市街地を含めた高度な運転支援や自動運転技術を前面に打ち出しています。
そのため、日産にとってもAI自動運転の本格投入は避けて通れないテーマです。
国産メーカーの中で早い段階から存在感を示せるかが問われます。

日産としては、「安全・安心」と「運転の快適さ」を組み合わせた価値を示すことで、存在感を高めたい考えです。
しかし、自動運転分野は技術開発だけでなく、信頼性や実用性の訴求も重要です。
そのため、単なる先進性のアピールではなく、日常利用での使いやすさが競争力になります。

今回の「9割の車種にAI搭載」という長期ビジョンは、車両そのものだけを指していません。
一方で、ソフトウェア更新やモビリティサービスとの連携を通じて、クルマを継続的に進化させる方向性も示しています。
つまり、日産は製造業の枠を超えた価値づくりへ踏み出そうとしています。

「売って終わり」から「育てるクルマ」への転換

今回の方針から見えるのは、日産が従来のビジネスモデルを見直そうとしている点です。
これまでは、クルマを販売した時点で収益の大部分が確定する構造が中心でした。
しかし、AIとソフトウェアの時代では、その後の機能進化も価値になります。

ソフトウェア更新とは、購入後も機能や性能を改善していく考え方です。
実際に、AIやデータを活用すれば、車は継続的に進化する商品へ変わっていきます。
そのため、日産は「クルマを売って終わり」ではなく、「クルマを育てていく」メーカー像を模索しているように見えます。

この変化は、開発体制、収益構造、ブランド戦略のすべてに関わります。
また、モビリティサービスとの連動が進めば、車の価値は所有だけでなく利用にも広がります。
日産のAI自動運転構想は、そうしたAI時代の自動車メーカー像を映し出す長期ビジョンといえます。

今後の焦点は実装時期と実用性の証明

今後の注目点は、まず新型エルグランドへの導入時期です。
報道では2027年度の導入予定が示されています。
一方で、具体的な発売タイミングや装備内容は今後の発表を待つ必要があります。

次に焦点となるのは、市街地でのハンズオフ走行がどこまで実用的な形で実現するかです。
市街地は歩行者、自転車、交差点、駐停車車両などが多く、高速道路よりはるかに複雑です。
そのため、日産 AI自動運転の真価は、こうした環境でどこまで安定して機能するかで判断されます。

さらに、ロボタクシー実証でどのようなデータと知見を積み上げるかも重要です。
こうした中、市販車とモビリティサービスの両輪でAIを鍛える戦略が形になるかが問われます。
日産の長期ビジョンは明確になりましたが、その成果は今後の実装と運用で試されることになります。

ソース

時事通信
共同通信
東京新聞デジタル
神戸新聞NEXT
産経ニュース
佐賀新聞
デイリースポーツ
読売新聞
Livedoorニュース
ITmedia NEWS
Car Watch
インプレス系ニュースサイト
日産自動車 企業情報サイト(技術解説)

タイトルとURLをコピーしました