日本国債のトークン化で24時間取引へ|メガバンク連合がブロックチェーン活用を加速

日本の大手銀行と証券会社が連携し、2026年内にも日本国債をブロックチェーン上でトークン化し、24時間365日取引できる仕組みを導入する方針を固めました。

日本経済新聞が2026年5月7日に報じた内容です。
この取り組みは、機関投資家向けのレポ市場の効率化を主な狙いとしています。
そのため、日本の伝統金融が大きく姿を変える可能性があります。

また、この動きは金融庁の決済高度化プロジェクトとも連動します。
つまり、日本が世界的なトークン化の流れに本格参入する節目になるということです。
日本国債市場のデジタル化が、いよいよ具体段階に入ったと言えます。

参加するのは国内外の主要金融機関

Progmat社が運営するデジタルアセット共創コンソーシアム、いわゆるDCCは、2026年5月に「トークン化国債・オンチェーンレポワーキンググループ」を新設しました。

このワーキンググループには、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、大和証券、SBI証券、ブラックロック・ジャパン、ステート・ストリート信託銀行など、国内外の主要金融機関が参加しています。
こうした中、日本のメガバンク連合と大手証券会社が同じ枠組みに入りました。
そのため、単なる実験ではなく、実運用を見据えた動きとして注目が集まります。

ワーキンググループは、2026年10月に報告書を公表し、2026年末のシステム稼働を目指すとされています。
実際に、参加メンバーの顔ぶれを見ると、制度設計だけでなく運用面まで視野に入れた準備が進んでいることがうかがえます。

対象は約200兆円規模のレポ市場

今回の中心となるのは、主にレポ市場です。
レポ市場とは、国債などの有価証券を担保にして短期資金をやり取りする市場のことです。
機関投資家や金融機関にとって、資金繰りと運用の両面で重要な役割を担います。

日本国内の国債レポ取引残高は、約200兆円規模とされています。
一方で、現在の決済はT+1が基本です。
これは、取引成立の翌営業日に決済する仕組みを意味します。

しかし、今回の構想では、ステーブルコインを活用したT+0の即時決済を目指します。
T+0とは、取引したその日のうちに決済を完了させる方式です。
つまり、これまでの営業日ベースの制約を外し、24時間365日運用へ移行する構想です。

すでに進む実証実験が土台になっている

この取り組みは、突然始まったものではありません。
背景には、2026年4月20日に開始されたJGBデジタル担保管理の実証実験があります。

この実証実験には、日本証券クリアリング機構、みずほ、野村ホールディングス、Digital Asset Holdingsが参加しています。
また、ブロックチェーン上で日本国債の権利移転をどう法的に扱うかについても、検証が進んでいます。
つまり、技術だけでなく、権利関係の整理も同時に進めている段階です。

一方で、金融庁は2026年2月以降、ステーブルコインを活用した有価証券決済の実証を支援しています。
さらに、片山さつき財務相が政府として後押しする考えを表明しています。
そのため、この構想は民間だけの挑戦ではなく、政策面の支援も受けた動きだと位置づけられます。

ブロックチェーン導入で何が変わるのか

ブロックチェーンとは、取引記録を複数の参加者で共有し、改ざんしにくい形で管理する技術です。
金融の世界では、権利移転や決済を効率化する仕組みとして注目されています。
今回の日本国債のトークン化も、この技術を活用するものです。

メリットの一つは、T+0決済の実現によって機関投資家の資金回転率が高まることです。
資金を早く再投入できれば、取引機会も広がります。
また、その結果としてレポ市場の流動性向上も期待されます。

さらに、ブロックチェーンによる「原子的決済」も重要です。
原子的決済とは、資産の受け渡しと代金の支払いを同時に完了させる仕組みです。
そのため、一方だけが履行されるリスクを抑えやすくなります。

海外では伝統金融とDeFiの接続も進んでいる

今回の構想は、日本だけの特殊な動きではありません。
世界では、トークン化とオンチェーン金融への移行が着実に広がっています。

実際に、海外事例ではDTCC関連で2024年時点に3,300億ドル規模の動きが見られました。
こうした流れは、伝統金融とDeFiの融合を後押しします。
DeFiとは、銀行などの中央管理者を介さずに金融機能を提供する分散型金融のことです。

しかし、日本ではこれまで個人向け資産のトークン化が先行してきました。
一方で、今回の日本国債トークン化は、機関投資家市場に本格的に踏み込む点で意味が異なります。
つまり、金融市場の中核部分へデジタル技術を持ち込む試みです。

メリットだけではなく課題も残る

もちろん、期待が大きい一方で、課題も明確です。
まず挙げられるのが、ブロックチェーンインフラのサイバーセキュリティリスクです。
24時間365日動く仕組みほど、止まった時の影響は大きくなります。

また、ステーブルコインの規制未整備も懸念材料です。
ステーブルコインは法定通貨などに価値を連動させるデジタル資産ですが、制度設計が不十分だと決済の信頼性に影響します。
そのため、技術開発と並行して制度面の整備が欠かせません。

さらに、国内のST発行累計3,600億円の大半が個人向け不動産に偏っている現状もあります。
STはセキュリティトークンの略で、権利をデジタル化した証券のことです。
一方で、機関投資家市場がすぐに大きく広がるかどうかは、まだ見通せません。

2026年末稼働に慎重な見方もある

一部の専門家は、2026年末の稼働目標は楽観的だとみています。
理由として指摘されているのが、法改正の遅れです。

特に、書入電子化法対応の遅れが論点になっています。
つまり、権利の電子化を支える法制度が間に合わなければ、実運用のスピードも鈍る可能性があります。
技術が整っても、法的な裏付けが弱ければ市場全体は動きにくいからです。

また、金融市場の基盤は安定性が最優先です。
そのため、新しい仕組みを導入する際には、速さだけでなく信頼性が厳しく問われます。
日本国債のトークン化は、技術実証から制度実装への壁を越えられるかが焦点になります。

約1200兆円の国債市場デジタル化が持つ意味

本イニシアチブは、残高約1,200兆円、9兆ドル超とされる日本国債市場の一部をデジタル化する流れにつながります。
この規模は、アジア最大級の固定収入市場にふさわしい重みがあります。

そのため、成功すれば日本の金融市場の国際競争力を高める材料になります。
また、日本国債だけでなく、株式や社債への拡大も視野に入ります。
さらに、CBDC連携まで進めば、金融システム全体の高度化に波及する可能性があります。

CBDCとは、中央銀行デジタル通貨のことです。
中央銀行が発行するデジタルなお金で、既存の決済網と新しいデジタル資産市場をつなぐ役割が期待されています。
こうした中、日本国債のトークン化は、その入口としても重要です。

今後の焦点はワーキンググループ報告書

今後の最大の注目点は、2026年10月に公表予定のワーキンググループ報告書です。
この報告書が、制度設計、技術要件、法的整理、運用体制をどこまで具体化できるかが重要になります。

また、2026年末のシステム稼働を目指す以上、残された時間は多くありません。
一方で、参加機関の幅広さは前進材料です。
実際に、メガバンク、証券会社、外資系金融機関がそろうことで、実需に沿った制度設計が進む可能性があります。

ブロックチェーンは、単なる新技術ではありません。
日本国債という伝統金融の中心をどう変えるかが問われています。
伝統と革新の交点で、日本の金融インフラ改革が本格的に始まろうとしています。

ソース

日本経済新聞
CoinPost
金融庁
Progmat公式発表

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