内閣府、物価高と賃上げ継続を最大の課題とする経済レポートを公表

内閣府は10日、国内外の経済情勢を幅広く分析した2025年度版「日本経済レポート」を公表しました。
このレポートでは、日本経済が今後も安定的に成長していくためには、現在続いている物価上昇への対応が避けて通れない課題であり、家計の負担を総合的に軽減する政策が重要だと指摘しています。

単に経済成長率を押し上げるだけではなく、国民一人ひとりが「生活が楽になった」と実感できる成長を実現できるかどうかが、今後の経済運営の焦点になるとの問題意識が示されています。

食料品価格の上昇が続き、節約志向が広がる家計

レポートによりますと、2020年代に入ってからの物価上昇局面では、特に食料品価格の上昇が目立つ状況が続いています。
円安の進行や輸入原材料の価格上昇が重なり、日常生活に直結する食品の値上げが家計を圧迫しています。

一方で、賃金の伸びは物価上昇のペースに追いついておらず、ほぼすべての年代や所得層で、消費の伸びが抑えられていると分析されています。
この5年間で貯蓄率が上昇していることは、将来への不安から、支出を控える行動が広がっていることを示しています。

低所得世帯と高齢者に特に重くのしかかる物価高

物価高の影響は、すべての世帯に均等に及んでいるわけではありません。
レポートでは、低所得世帯や高齢者世帯ほど、物価上昇の影響を強く受けている点が強調されています。

これらの世帯は、家計に占める食料費の割合が高いため、食品価格の上昇が生活水準に直結しやすい構造にあります。
政府はこれまで、電気・ガス料金の補助などを通じて負担軽減を図ってきましたが、レポートでは、新たな電気・ガス料金支援を含めた、より包括的な物価高対策が必要だとしています。

賃上げは進むが、業種や世代による格差が拡大

賃上げの状況についても、レポートは課題を指摘しています。
若年層、特にZ世代や大企業では賃金上昇が見られる一方で、中高年層や中小企業では賃上げの広がりに差が出ています。

医療や福祉の分野では賃金の伸びが頭打ちとなり、人手不足が深刻化しているにもかかわらず、十分な処遇改善が進んでいません。
建設業でも、高度な技能を持つ人材とそうでない人材の間で、賃金水準の差が広がるなど、二極化の傾向が強まっています。

実質賃金は4年連続で減少し、生活実感は改善せず

厚生労働省が公表した2025年平均の毎月勤労統計調査によりますと、物価の変動を考慮した実質賃金は前年比1.3パーセント減となりました。
これで実質賃金は4年連続のマイナスとなり、名目上の賃上げがあっても、生活のゆとりを感じにくい状況が続いています。

レポートは、賃上げが一部の層に限られている現状では、消費の本格的な回復にはつながらないと指摘しています。
賃金上昇を幅広い層に行き渡らせることが、景気回復の前提条件だとしています。

生産性の低さが賃上げを阻む構造的問題

内閣府は、持続的な賃上げを実現するための前提として、労働生産性の向上が不可欠だと強調しています。
日本の時間当たり労働生産性は、米国やドイツと比べて低い水準にとどまっています。

労働生産性とは、一定の労働時間でどれだけの付加価値を生み出せるかを示す指標です。
この水準が低いままでは、企業が賃金を引き上げたくても、その原資を安定的に確保することが難しくなります。

中小企業の生産性向上へ、M&A活用を後押し

レポートは、中小企業の生産性を高める具体策として、合併・買収、いわゆるM&Aの活性化を提言しています。
M&Aによって経営資源を集約することで、収益力の改善とともに、労働生産性や賃金水準の引き上げにつながる効果が期待できるとしています。

単なる企業整理ではなく、企業の成長力を高め、結果として賃上げを可能にする前向きな再編として、M&Aを位置づける必要があるとの考えです。

物価高対策と成長戦略をどう両立させるか

今回の日本経済レポートは、物価高への即効性のある対策と、賃上げを支える中長期的な成長戦略を同時に進める必要性を強く訴えています。
家計支援だけでも、成長戦略だけでも不十分であり、両者をどう組み合わせるかが今後の経済運営の最大の課題となります。

生活実感の改善を伴う経済成長が実現できるかどうかは、政府の政策実行力と企業の取り組みにかかっています。

ソース

内閣府
47NEWS
日本経済新聞
ロイター
東京新聞

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