ケンブリッジ大学研究で判明 未知の腸内細菌CAG-170と健康の深い関係

ケンブリッジ大学の研究チームは、人間の腸内に存在しながら、これまで詳しく調べられてこなかった細菌群が、人の健康状態と深く関係していることを明らかにしました。
この研究は2月8日、国際的な学術誌に掲載され、腸内環境と病気の関係を理解するうえで重要な手がかりを示しています。

研究者たちは、39カ国、11,000人以上から採取された腸内微生物叢、つまり腸の中にすむ細菌の集合体を分析しました。
その結果、CAG-170と呼ばれる細菌属が、健康な人の腸内では一貫して多く存在していることが分かりました。

「隠れた腸内細菌叢」と呼ばれる理由

CAG-170に属する細菌は、一般的な実験室環境では増やすことができず、これまで直接観察されたことがありません。
そのため、これらの細菌は、腸内から得られたDNA情報、つまり遺伝子の解析によってのみ存在が確認されてきました。

このように、姿は見えないものの、遺伝情報として確かに存在する細菌群は、「隠れた腸内細菌叢」と呼ばれています。
研究チームは、培養できない細菌であっても、遺伝情報を詳しく調べることで、その役割や重要性を推定できることを示しました。

健康な人ほどCAG-170が多いという共通点

研究では、健康な人と、さまざまな疾患を抱える人の腸内細菌叢が比較されました。
その結果、炎症性腸疾患、肥満、クローン病、大腸がん、慢性疲労症候群、パーキンソン病、多発性硬化症などを持つ人々では、CAG-170の量が明らかに少ないことが確認されました。

一方で、これらの病気を持たない人の腸内では、CAG-170が安定して高い水準で存在していました。
このことから、CAG-170の量は、その人が健康な腸内環境を保っているかどうかを示す目安になる可能性があると考えられています。

CAG-170は腸内全体の働きを支える存在

研究を率いたアレクサンドル・アルメイダ博士は、CAG-170について、「食事に含まれる主要な成分の消化を助け、腸内細菌全体がうまく機能するよう支えている可能性が高い」と説明しています。

つまりCAG-170は、特定の栄養を処理するだけでなく、腸内にいる他の細菌が働きやすい環境を整える役割を担っていると考えられます。
腸内細菌叢は、多数の細菌がバランスを取りながら共存しており、その中の一部が減るだけでも、全体の調和が崩れやすくなります。

3つの方法で関係性を丁寧に検証

研究チームは、CAG-170と健康との関係を確かめるため、3つの異なる分析方法を用いました。
まず、腸内細菌の包括的な遺伝子カタログと、実際のサンプルを照合しました。

次に、6,000人以上の健康な人の腸内細菌データをコンピューターで解析し、共通する特徴を調べました。
さらに、ディスバイオシスと呼ばれる腸内細菌のバランスが崩れた状態にある人々について、CAG-170の量を詳しく測定しました。

腸内バランスの乱れと幅広い疾患とのつながり

その結果、CAG-170が少ない人ほど、腸内細菌のバランスが乱れている可能性が高いことが分かりました。
ディスバイオシスは、消化器の不調だけでなく、全身の健康状態にも影響を及ぼします。

研究では、CAG-170の低下が、過敏性腸症候群、関節リウマチ、不安障害、うつ病などとも関連していることが示されています。
これは、腸と免疫、さらには脳の働きが互いに影響し合うという近年の研究結果とも一致しています。

ビタミンB12を生み出し、他の細菌を支える役割

遺伝子解析をさらに進めたところ、CAG-170には、ビタミンB12を作り出す能力があることが分かりました。
加えて、炭水化物や糖、食物繊維を分解するための酵素も持っています。

研究者たちは、CAG-170が作るビタミンB12は、人間が直接吸収するためというより、腸内に共存する他の細菌の活動を支えるために使われている可能性が高いと考えています。
この点からも、CAG-170は腸内環境の土台を支える存在といえます。

新しい診断やプロバイオティクスへの期待

今回の研究成果は、将来的に新しい健康指標や治療法につながる可能性があります。
アルメイダ博士は、「現在市販されているプロバイオティクスは、腸内細菌研究の進歩に十分追いついていない」と指摘しています。

多くの製品は、何十年も前から知られている限られた菌種を使い続けています。
一方で、CAG-170のように健康との結びつきが強い新しい細菌群を理解し、それらを支援する形のプロバイオティクスが開発されれば、より実感できる健康効果が期待されます。

最大の課題は培養と実験による検証

この研究は、アルメイダ博士が過去に作成した「ヒト消化管統合ゲノムカタログ」を基盤としています。
このカタログでは、人の腸内に4,600種以上の細菌が存在し、そのうち3,000種以上が未知の細菌であることが示されています。

ただし、CAG-170を医療や治療に応用するためには、実際に培養し、安全性や効果を確認する必要があります。
研究者たちは、この課題を克服することで、腸内細菌研究を実用段階へと進めたいとしています。

ソース

New Scientist
Cell Host & Microbe
Medical Xpress
ケンブリッジ大学発表

タイトルとURLをコピーしました