蚊は200万年前に人間を刺すように進化か ホモ・エレクトスと共進化の可能性【Scientific Reports】

蚊が約200万年前に人間を刺すよう進化した可能性

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科学誌Scientific Reportsに2月25日付で掲載された研究により、東南アジアの一部の蚊が約290万年前から160万年前の間に人間の血を好むように進化した可能性が示されました。

これは、現生人類が登場するはるか以前の出来事です。つまり、蚊と人類の関係は想像以上に古い歴史を持つ可能性があります。

さらに研究は、最初の標的がホモ・エレクトスだった可能性が高いと結論づけました。

研究の背景と対象となった蚊

この研究は、イギリス、アメリカ、オーストラリア、マレーシア、タイ、インドの国際研究チームが実施しました。

対象となったのは、東南アジアに分布するハマダラカ・ロイコスフィルス群に属する11種38個体です。

この蚊群には、現在ほぼ人間のみを吸血する種もいれば、テナガザルやオランウータンなど霊長類を好む種も含まれています。

研究者らは、2,500以上の核遺伝子と13のミトコンドリア遺伝子を解析しました。

その結果、蚊の進化史を再構築し、初期ヒト族の移動時期と照合しました。

スンダランドで起きた吸血対象の転換

研究は、吸血対象の転換が起きた地域を特定しました。

それが、マレー半島、ボルネオ島、スマトラ島、ジャワ島を含むスンダランドです。

祖先状態復元という手法で解析した結果、もともとはサルを吸血対象としていたことが確認されました。

しかし、その後ヒト族(ホミニン)を好む吸人性へ一度だけ進化した可能性が高いと判明しました。

そしてその特性が、複数の子孫種へ広がったと考えられています。

ホモ・エレクトスとの時間的一致

この進化の時期は、約180万年前にホモ・エレクトスがスンダランドへ到来した推定時期と一致します。

一方で、ホモ・サピエンスが到達したのは約7万6,000年前から6万3,000年前です。

そのため研究者らは、吸人性の起源は解剖学的現代人ではなく、初期ヒト族であるホモ・エレクトスの到来と対応していると結論づけました。

嗅覚遺伝子の進化と宿主探索

蚊が宿主を見つける仕組みには、多数の嗅覚遺伝子が関与しています。

特に体臭受容体をコードする遺伝子の変化が重要です。

サルからヒト族への移行には、複数の遺伝子変異が蓄積する必要がありました。

このような進化は、大規模な宿主集団の存在がなければ進みにくいとされています。

つまり、ホモ・エレクトスが東南アジアに十分な規模で存在していた可能性を示す間接的証拠にもなります。

マラリア理解への重要な示唆

この研究は、人間嗜好性の起源を従来より数十万年さかのぼらせました。

これまで、アフリカのマラリア媒介蚊であるAnopheles gambiaeでは、人間嗜好性は50万9,000年前から6万1,000年前と推定されていました。

今回の結果は、それよりはるかに古い起源を示唆します。

世界保健機関(WHO)によると、2024年のマラリア感染者は推定2億8,200万人、死亡者は61万人でした。

蚊と人間の共進化を理解することは、今なお続く公衆衛生上の課題と直結しています。

今後の研究と応用の可能性

蚊がどのようにして人間を標的とする能力を獲得したのか。

この進化の過程を追跡することは、病気媒介生物と宿主の共進化を理解する上で極めて重要です。

さらに、特定の蚊種が人間を見つけやすくする特性を阻害する研究にも応用できる可能性があります。

蚊にとっては単なる進化の一歩だったかもしれません。

しかし人類にとっては、数百万年続く“刺される歴史”の始まりだった可能性があります。

ソース

Scientific Reports(2026年2月25日掲載論文)
World Health Organization(WHO)
popsci.com

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