ホルムズ海峡が事実上封鎖された状態が続く中、日本政府は、ホルムズ海峡を通らない原油代替調達を急いでいます。
2026年5月分については、前年実績の約6割を、米国や中東、中央アジアなどからの代替輸入で確保できるめどが立ちました。残りについては、備蓄放出で補う方針です。
今回の対応は、日本の原油調達がいかにホルムズ海峡に依存してきたかを改めて示すものです。
同時に、原油代替調達をどこまで広げられるかが、エネルギー安全保障の焦点になっています。
5月分は前年実績の約6割を代替輸入で確保へ
高市早苗首相は2026年4月24日、中東情勢に関する関係閣僚会議で、5月の原油調達分について説明しました。
その中で、前年実績の約6割を代替輸入で確保できるめどがついたとしています。
4月時点では、前年実績の2割強を、ホルムズ海峡経由以外の中東や米国などから確保する見通しでした。
不足分は備蓄放出で補う構図です。
政府は6月について、5月の水準を上回る原油代替調達を目指しています。
足元では、備蓄への依存を続けながらも、輸入そのものを多角化する段階に入ったとみるのが妥当です。
背景にあるホルムズ海峡の混乱
今回の対応の背景には、ホルムズ海峡が2026年3月上旬以降、軍事的緊張や保険停止などの影響で、事実上封鎖された状態が続いていることがあります。
日本は2025年の原油輸入量の93%を、ホルムズ海峡経由に依存していました。
このため、日本は供給への影響が特に大きい国の一つです。
ただし、「完全に一切通れない」という意味での封鎖と断定するのは正確ではありません。
4月には、日本関係船舶が同海峡を通過した事例も報じられています。
実態としては、通常の商業輸送が大きく阻害された事実上の封鎖状態と表現するのが適切です。
原油代替調達はどこまで進んだのか
ロイターによると、日本は2025年に月平均で日量236万バレルの原油を輸入していました。
この実績を基準にすると、4月は2割強、5月は約6割を、ホルムズ海峡を通らないルートで確保する見通しです。
政府は、中東、米国、中央アジアなどからの調達を進めています。
ここで重要なのは、5月分の必要量をすべて通常輸入で賄えるようになったわけではないという点です。
現時点での政府説明は、必要量のうち約6割を代替輸入で確保し、残る約4割を備蓄放出で補うというものです。
そのため、「必要量を確保できるめどが立った」と理解するのが正確です。
原油代替調達は前進していますが、代替輸入だけで危機を乗り切れる段階にはまだ至っていません。
備蓄放出は代替調達を補う柱
今回の政府対応は、原油代替調達と備蓄放出を組み合わせる点に特徴があります。
4月は約8割、5月は約4割を備蓄で補う見通しです。
代替輸入が増えるほど、備蓄への依存は低下していきます。
備蓄量については、解説資料などで、国家備蓄と民間備蓄を合わせた相当規模の石油備蓄があると説明されています。
ただし、「何カ月分」と単純化した数字は資料ごとに幅があります。
石油製品の目詰まりという別の課題
原油の確保見通しが立ちつつあっても、現場では石油製品の供給網の目詰まりが別の問題として残ります。
野村総合研究所の解説では、石油製品の流通で目詰まりが起きる背景として、供給不安による仮需の発生が挙げられています。
仮需とは、将来の不足や値上がりを見込んで、通常より多く買い急ぐ動きのことです。
さらに、原料、中間材、最終製品の各段階で偏在が起きることも、供給網の混乱につながります。
このため、マクロで原油量のめどが立っていても、潤滑油、接着剤、化学原料、医療関連資材などが個別に不足する可能性があります。
企業実務では、「原油が足りるか」だけでなく、「必要な製品が必要な時期に届くか」を分けて見る必要があります。
医療分野では透析関連資材などの安定供給が焦点
医療分野では、透析関連を含む一部資材について、供給の安定確保が重視されてきました。
報道ベースでは、少なくとも初秋ごろまでの安定供給に一定のめどが立ったとの説明もあります。ただし、その先の時期まで完全に不安が解消したとまでは確認できません。
原油や石油由来原料の供給不安は、燃料価格だけでなく、医療資材の調達にも影響しうる問題です。
そのため、政府の原油代替調達が進む一方で、医療現場に必要な資材が安定して届くかどうかも、引き続き重要な確認点になります。
化学・建設・製造業にも影響が及ぶ可能性
産業面でも、ナフサや石油由来原料に依存する分野では、原料価格の上昇や部材の偏在が収益と納期の両面に影響しうると指摘されています。
ナフサは、石油化学製品の基礎原料として使われる軽質油の一種です。
化学、建設、製造分野では、ナフサや石油由来原料を前提にした供給網が広く存在しています。
政府の代替調達拡大は前進ですが、供給網の末端まで安定するかどうかは、今後の物流調整や調達先の多角化の進み具合に左右されます。
原油そのものの確保と、最終製品の安定供給は同じではありません。
この点を分けて見ることが、今回のニュースを理解するうえで重要です。
今回の対応から読み取れること
今回のニュースは、日本政府がホルムズ海峡依存の高い原油調達を、短期間で組み替えようとしていることを示しています。
5月分について、前年実績の約6割を代替輸入で確保できるめどが立ったことは、危機対応として一定の前進です。
ただし現段階は、原油代替調達だけで危機を乗り切れる状態ではありません。
備蓄放出と組み合わせながら、供給を維持する移行局面です。
読者が注目すべきなのは、代替調達の比率だけではありません。
備蓄放出の継続状況、石油製品の目詰まりの有無、医療や製造業向け資材の供給安定化が進むかどうかを合わせて見る必要があります。
それによって、今回の原油代替調達の実質的な意味をより正確に理解できます。
ソース
ロイター
三菱UFJ銀行
読売新聞
NRI(野村総合研究所)
東京新聞

