世界のエネルギー市場と農産物市場が同時に大きく揺れています。
米国・イスラエルとイランの戦争激化により原油価格が1バレル100ドルを突破し、肥料供給やバイオ燃料需要に影響が広がりました。
その結果、小麦・大豆・パーム油など主要農産物価格が一斉に上昇しています。
食料価格の上昇は、世界的なインフレや食料安全保障にも影響する可能性があります。
つまり、エネルギー危機が世界の食料市場にも波及し始めたという状況です。
今後の戦争の長期化次第では、食品価格のさらなる上昇も懸念されています。
原油価格急騰が農産物市場を直撃
月曜日、米国・イスラエルとイランの戦争のエスカレーションにより原油価格が急騰しました。
ブレント原油は1バレル104ドルを超える水準まで上昇しました。
このエネルギーショックは農産物市場にも直ちに波及しました。
小麦先物は4%以上上昇し、2024年6月以来の高値を記録しました。
また、大豆も2024年5月以来の高値水準まで上昇しています。
さらにパーム油も急騰し、週間上昇幅を拡大しました。
つまり、穀物と植物油市場全体が同時に上昇する状況となっています。
農産物価格上昇の二つの要因
今回の農産物価格の急騰には、二つの要因があります。
第一に、肥料価格の急騰です。
肥料コストの上昇は農家の生産コストを直接押し上げます。
第二に、バイオ燃料需要の拡大です。
石油価格が上がると、植物油などを原料とするバイオ燃料の需要が増えます。
つまり、
「生産コスト上昇」と「代替燃料需要」という二重の圧力が農産物価格を押し上げています。
ホルムズ海峡封鎖で肥料供給が危機的状況
肥料市場では特に深刻な影響が出ています。
原因はホルムズ海峡の事実上の封鎖です。
米国肥料協会によると、
- 世界の尿素輸出の約50%
- 世界の硫黄輸出の約半分
がホルムズ海峡西側の国々から供給されています。
つまり、この海峡は世界肥料物流の重要ルートです。
さらに、
世界第4位のリン酸塩輸出国であるサウジアラビアも影響を受けています。
同国は米国最大のリン酸塩供給国でもあります。
そのため、世界の肥料供給網が大きく揺らいでいます。
尿素価格が急騰 農家の負担が急増
肥料価格はすでに急騰しています。
紛争発生後の数日間で、
ニューオーリンズ港の尿素価格は
約70ドル上昇しました。
StoneX Groupの肥料部門副社長、ジョシュ・リンビル氏によると
- 価格は 470ドル
- その後 550ドル以上
まで跳ね上がりました。
また、エジプトでも尿素価格は1トン550ドルまで上昇しました。
これは最大13%の値上がりです。
農家は肥料購入を延期 作付けに影響も
アーカンソー州の農業経済学者、
ブレント・スタイルズ氏は次のように指摘しています。
「これは最悪のタイミングで起きている」
多くの農家はすでに利益率が低く、
肥料購入を延期していました。
さらにリンビル氏は、
ペルシャ湾で積み込まれた尿素が
米国の農場に届くのは5月になると警告しています。
つまり、春の施肥シーズンに間に合わない可能性があります。
バイオ燃料需要が植物油市場を押し上げ
一方で、エネルギー価格上昇は
植物油市場にも影響を与えています。
シカゴ商品取引所では、
大豆油先物が
1ポンド65.74セントまで上昇しました。
これは2023年7月以来の高値です。
S&P Globalによると、
この上昇はさらに拡大する可能性があります。
パーム油価格も急騰
パーム油市場でも上昇が続いています。
マレーシア市場では
パーム油と軽油の価格差
PO-GO価格差
が1週間で44%縮小しました。
これはバイオディーゼル生産の採算性が
大きく改善したことを意味します。
マレーシア証券会社Pelindung Bestariの
アナリスト、リンガム・スプラマニアム氏は
「PO-GO価格差の縮小が市場センチメントを支える最大の要因だ」と述べています。
パーム油価格は
3月6日までの週で8%上昇しました。
世界的な食品インフレの可能性
この状況は、世界の食料価格上昇につながる可能性があります。
米国農務省(USDA)は
紛争前の段階で
2026年の食品価格は3%上昇すると予測していました。
しかし現在は状況が変わっています。
農家は肥料不足を懸念し、
作付けを変更する可能性があります。
トウモロコシから大豆へ作付け変更の可能性
特に問題となるのが窒素肥料です。
窒素肥料はトウモロコシ栽培に大量に必要です。
もし供給が間に合わなければ、
農家はトウモロコシ → 大豆へ作付けを変更する可能性があります。
この変化は世界の穀物需給にも影響を与えます。
中国の輸出規制強化の可能性
ロイター通信によると、
中国はこの危機を受け肥料輸出規制を強化する可能性があります。
もし実施されれば、
世界の肥料供給はさらに逼迫します。
つまり、
現在の農産物価格上昇は
短期ではなく長期的な食料インフレにつながる可能性があります。
戦争長期化でエネルギー供給にも影響
RBCのエネルギーアナリスト、
ヘリマ・クロフト氏は次のように警告しました。
「紛争が長期化すれば、OPEC石油のかなりの部分が座礁資産になる可能性がある」
座礁資産とは、
経済的に利用できなくなる資産のことです。
つまり、紛争が続けば
中東の石油供給そのものが不安定になる可能性があります。
食料・エネルギー・物流が同時に揺らぐ世界
今回の危機は単なる原油高ではありません。
影響は
- エネルギー市場
- 肥料供給
- 農業生産
- 食料価格
へと広がっています。
つまり、エネルギー危機が食料危機へ連鎖する構図です。
もし紛争が長期化すれば、
世界経済にとって
2008年の食料危機に匹敵する衝撃になる可能性も指摘されています。
ソース
Country Guide
The Fertilizer Institute
Bloomberg
S&P Global
Reuters
CRU Group
Brownfield Ag News
Trading Economics

