日本政府は、2026年度から2030年度までの5年間で科学技術関連の政府投資を60兆円に倍増する方針を固めました。
また、民間を含めた官民合計の研究開発投資目標も180兆円に引き上げる計画です。
この方針は、日本の研究力低下への危機感を背景にしています。
つまり、科学技術分野での国際競争力を回復するための国家戦略です。
さらに政府は、AI・宇宙・核融合などの先端分野を重点投資領域と位置付けました。
今後、日本は「新技術立国」を掲げ、研究開発政策を国家戦略の中核に据える考えです。
第7期科学技術・イノベーション基本計画の柱
今回の投資拡大は、2026年度から始まる「第7期科学技術・イノベーション基本計画」に盛り込まれる予定です。
この計画は、日本の科学技術政策の方向性を示す5年間の国家戦略です。
計画の策定は、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が進めています。
CSTIは、日本政府の科学技術政策を統括する司令塔です。
政府は、この基本計画を2026年3月末までに閣議決定する見通しです。
つまり、日本の研究開発政策はこの計画を基盤に展開されます。
前の計画から大幅拡大
前期の第6期科学技術・イノベーション基本計画(2021~2025年度)では、
政府の投資目標は約30兆円でした。
また、官民合計の研究開発投資は約120兆円が目標でした。
しかし今回の計画では、政府投資が倍増して60兆円になります。
さらに、官民合計の投資額も180兆円へ拡大する方針です。
つまり、研究開発投資全体は50%増加する規模となります。
第6期では政府投資は目標を上回りました。
一方で、官民合計の投資額は目標に届かなかったとされています。
日本の研究力低下への危機感
こうした政策の背景には、日本の研究力低下があります。
特に問題視されているのが、国際的に影響力の高い論文数の減少です。
被引用数上位10%に入る論文の国別ランキングでは、
日本は2001~2003年に世界4位でした。
しかしその後順位は低下しました。
2021~2023年には世界13位まで後退しています。
このランキングは、研究成果がどれだけ世界の研究に影響を与えたかを示す指標です。
つまり、日本の研究の国際的存在感が弱まっていることを意味します。
そのため政府は、基礎研究の立て直しを政策の中心に据える方針です。
2026年度予算でも研究支援を強化
政府はすでに2026年度予算でも研究支援を拡大しています。
文部科学省の科学振興関連予算は前年度より290億円増加しました。
総額は2兆35億円に拡大しています。
これは研究環境の改善を目的とした措置です。
また、科学研究費助成事業(科研費)も増額しました。
科研費は、大学研究者の基礎研究を支える代表的な資金制度です。
今回の増額は100億円を超える規模となりました。
これは15年ぶりの大幅増額です。
つまり、日本政府は基礎研究の再強化を急いでいます。
AI・量子・核融合など先端技術を重視
新しい基本計画では、いくつかの先端分野を重点領域に設定します。
主な分野は次の通りです。
・人工知能(AI)
・量子技術
・核融合
・バイオテクノロジー
・宇宙・航空技術
AIは、研究を加速する技術としても重要視されています。
例えば、AIが研究データを解析し新しい発見を支援する「AI for Science」が注目されています。
また、核融合は次世代エネルギー技術です。
実用化すれば、ほぼ無尽蔵のエネルギー源になる可能性があります。
つまり、日本政府は将来産業の基盤技術に資金を集中させる戦略です。
激化する技術覇権競争
科学技術投資の拡大は、国際競争の激化も背景にあります。
現在、世界では技術覇権競争が急速に進んでいます。
技術覇権とは、
先端技術を握ることで経済と安全保障を優位にする戦略です。
例えば、中国は科学技術投資を大幅に増やしています。
2026年の科学技術予算は前年比10%増の4264億元です。
これは日本円で約9兆7700億円に相当します。
つまり、各国が研究開発投資を急拡大している状況です。
こうした中、日本も研究投資を増やし巻き返しを図ります。
「新技術立国」構想
政府は、日本を「新技術立国」として再構築する方針です。
これは科学技術を国家成長の中心に据える政策です。
つまり、研究成果を産業化につなげ、
経済成長と安全保障の両方を強化する狙いがあります。
しかし課題もあります。
第6期計画では、官民投資が目標に届きませんでした。
そのため、今後の焦点は民間投資をどこまで引き出せるかです。
研究環境の改善や人材育成も重要になります。
つまり、投資額だけではなく、
研究システム全体の改革が求められています。
ソース
日本経済新聞
北海道新聞
東洋経済オンライン
内閣府
文部科学省
科学技術振興機構(JST)

